旧家の部材を生かしてみる

2011.10.14

東京・世田谷区にある江戸時代の古い民家の解体修理を世田谷区教育委員会から依頼された。建物を測量して図面を起こし、それから通し番号をつけていく。いろはにほへとちりぬる……、一、二、三、四……とX軸とY軸に番号を入れて、すべての部材の記号を蒲鉾板状の板に墨で書き込み、それを部材に釘で止めていくのだ。もちろん方位や上下も確認できるように配慮されている。この家の梁には、実に美しい伝統的な加工方法が採用されていた。手斧(槍の形をした木材の加工道具、鉋[かんな]の原型)の跡が実に美しく一定のリズムで刻まれた表面は、現在の技術でもおよばないほど高度なものである。手斧は古くは弥生時代に存在したといわれる。この道具で木材の表面を削ってきた。古いものは片手で、桃山時代に大型化して両手でもつように形が変化した。現在の鉋は江戸時代に登場するもので、比較的歴史の浅い工具である。手斧は振り子の原理を利用して木材の表面を削るため凸凹になっているが、切られた表面は鋭利であり、鉈よりも鋭く削れていることが顕微鏡で見るとよくわかる。鉈は木材繊維をひきちぎっているが、手斧は完全に削っているのである。

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